Ari's Lab
フィンスイミングとは
2022/11/20 作成
フィンスイミングは、1枚の足ひれ、モノフィン、あるいは2枚の足ひれ、ビーフィンを足部につけて泳記録を競う競技です。
その魅力は何と言ってもスピード感!
モノフィンをつけて泳ぐ男子の世界記録は50mで13秒7、100mで33秒7と、競泳の1.5倍くらいのスピードが出ます。
フィンスイミングは競泳より新しいスポーツで、道具であるフィンは新しいタイプが開発され進化し続けています。
フィンスイミングはオリンピック種目の新競技として2回候補にあがっていますが、残念ながらまだ採用にはいたっていません。
ただ、世界選手権は1976年から行われており、オリンピックに採用されていない競技種目の国際総合競技大会であるワールドゲームズには1981年の第1回からの採用されています。
なお、2022年のワールドゲームズでは、100mサーフィス種目で上野浩暉選手が4位と好成績をおさめています。
|モノフィン競技
モノフィン競技では長さ・幅ともに約70cm、重さが1~4kgあるモノフィンを足部につけて泳ぎます。
その泳動作は、競泳のバタフライやクロールのスタート後やターン後の水中ドルフィンキックと同様に、ストリームライン姿勢(抵抗が小さくなるように両腕を伸ばして手を頭の上で組む姿勢)を保持したまま体幹と下肢の屈曲伸展動作で推進力を得ます。

モノフィンスイミング泳動作(Ari's Lab作成)
|ビーフィン競技
ビーフィン競技では、ビーフィンを足部につけて競泳のクロールと同様のプル動作とキック動作により推進力を得ます。
国際的に認証されたビーフィンのみ使用できる国際競技種目(CMAS*ビーフィン)と、どのようなビーフィンでも使用できる日本国内限定種目(Jビーフィン)があります。
ビーフィンスイミング、特にJビーフィンは、競泳経験者も未経験者も取り組みやすい競技となっています。
*CMAS:世界水中連盟(Confederation Mondiale des Activites Subaquatiques)
速く泳ぐためには?
2022/11/20 作成 2023/03/19修正
フィンスイミングで速く泳ぐためにはどのような泳ぎ方がよいのでしょうか?
その情報はまだ限られていますが、これまで報告されたフィンスイミング泳動作解析の論文からそのヒントを探してみましょう。
POINT
POINT
シミュレーション解析から速く泳ぐことができると結論づけられている泳ぎ方は
●モノフィン・ビーフィン使用時ともに足関節は脛骨と足部が一直線上になるくらいの角度で固定すること
●モノフィンスイミングでは一蹴りで進む距離を維持できる範囲でキックを速く打つこと
|フィンスイミングの泳動作に関する研究
●Rejman & Oshmann (2009) は、モノフィンスイミング泳動作のシミュレーション解析から、最大泳速度を得るためには足関節角度を脛骨(すね)と足部が一直線となる180°から160°(わずかに背屈位)の間に制御することが重要と報告しています。

足関節180°(左)と160°(右)のイメージ図
(Ari's Lab作成)
●さらに、Rejman (2013) は同様にモノフィンスイミング泳動作のシミュレーション解析から、速く泳ぐためにはキック長(1回のキックで進む距離)を維持できる最大レベルまでキック頻度(1秒間のキック回数)を上げる必要がある、と結論づけています。
●Nakashimaら (2019) は、ビーフィンスイミング泳動作のシミュレーション解析から、競泳のクロールでは足関節を固定しない方が速いが、ビーフィンスイミングでは足関節を動かすより完全に固定させた方が速く泳げること、その固定する角度は脛骨と足部が一直線に近い角度だったことを報告しています。
これらの報告から、フィンスイミングで速く泳ぐには足関節の底背屈を使いすぎず、過底屈にせず、脛骨と足部が一直線に近い角度で固定して泳ぐのがよいと考えられます。

足関節過底屈となる泳動作

脛骨と足部が一直線に近い足関節角度の泳動作
ダウンキック時のイメージ図(Ari's Lab作成)
ただし、シミュレーション解析から得られた足関節角度は計算上の理論値です。
現実的には足関節を完全に固定することは不可能で、脛骨と足部が一直線となる180°から160°の間に制御することも相当難しいと思います。
また、この泳動作がどのような選手にも適しているかはまだわかりません。
それでも、モノフィン、ビーフィン使用時ともに同様の結果が報告されていることは意味のあることと考えています。
|足関節固定でなぜ速く泳げる?
●競泳の水中ドルフィンキックの場合、足部によって推進力生まれると考えられていますが(杉本ら, 2008; Loebbeckeら, 2009)、フィンスイミングの場合、大きなフィンが推進力を生み出すと考えられています (Rejmanら, 2003)。
●Nakashimaら (2019) は、シミュレーション解析で足関節を完全に固定させた場合、ビーフィンは流体力により曲がり推進力が大きくなったが、一方で足関節を固定させない実際の泳動作では、フィンの曲がりが小さく推進力が小さくなったと述べています。
このように、足関節は脛骨と足部が一直線になる角度に近い角度でできるだけ固定させた方がフィンを効率よく動かすことができ、その結果、速く泳げるのかもしれません。
|今後の研究の進展に期待
私は足関節を過底屈にならない角度で固定させるように意識して泳ぐことで、速く泳ぐことと外傷・障害予防を両立させられるとよいなと思っています。
今後、さらに泳動作解析の研究が進展することを期待しています。
フィンスイミングによる痛み:調査研究の結果
2023/03/19作成 2023/07/23修正
スポーツによる外傷(けが)や障害(慢性的な痛み)を減らすためには、その競技特有の外傷・障害の特徴を知る必要があります。
具体的には、その競技による外傷・障害や痛みはどの身体部位に多いのか、なぜその痛みが生じるのかを調べます。
フィンスイマーやチーム代表者の方々のご協力により私たちが実施した調査研究や大会・合宿などのサポート活動の施術録、症例から以下のことがわかりました。
POINT
●フィンスイミングによる痛みは足関節や足部に多い
●足関節の痛みは ”フィン使用時の足関節の緩さや不安定感” と関連が高い
●足関節の痛みには足関節捻挫、足関節後方インピンジメント症候群(三角骨障害)が含まれる
●足関節後方インピンジメント症候群は手術例や痛みの長期化があるため特に注意が必要

モノフィンスイミングによる痛みの部位
(Ari's Lab作成)

フィンスイミングによる足関節周囲部痛の推定病態と経過期間 湯浅(2022)の図を一部改変
(Ari's Lab作成)
PAIS:足関節後方インピンジメント症候群
フィンスイミングによる痛みの詳細や対策については、次の足関節捻挫、足関節後方インピンジメント症候群、腱障害をご参照ください。
関連する投稿論文
・湯浅安理,宮本俊和,森山朝正,宮川俊平.フィンスイミングによる痛みの実態-年末合同合宿参加選手への実態調査ー.日本東洋医学系物理療法学会誌.42(2),103-110.2017.https://doi.org/10.32255/jjsop.42.2_103
・湯浅安理,増成昭彦,吉田成人,向井直樹,宮川俊平,宮本俊和.フィンスイミング日本選手権出場選手の足関節痛との関連要因.運動疫学研究.22(1),35-44,2020.https://doi.org/10.24804/ree.1911
・湯浅安理,宮川俊平,宮本俊和,向井直樹.足関節後方深部痛が運動療法により改善したフィンスイマーの1症例.臨床スポーツ医学会誌.29(2),198-202.2021.https://www.rinspo.jp/journal/2020/files/29-2/198-202.pdf
・湯浅安理.フィンスイミングにより生じる足関節周囲部痛の特徴~合宿・大会時の施術録調査から~.水と健康医学研究会誌,23(1),69-75,2022.https://mol.medicalonline.jp/archive/search?jo=dn0aquat&ye=2022&vo=23&nu=1
フィンスイミングによる痛みの詳細と対策(1)
|足関節捻挫
2023/07/17作成
足関節捻挫は、足関節の内がえしや外がえしが強制されることにより生じる足関節周囲の靱帯の損傷です。
最も多いのは内がえし捻挫による前距腓靱帯の損傷で、足関節の内がえし+底屈で痛みが生じます。

足関節内がえし捻挫で前距腓靱帯損傷が生じやすい(Ari's Lab作成)
競泳選手は足関節の柔軟性が高いため陸上で足関節捻挫を起こしやすく、キック動作で足関節は最大底屈位を強制されることにより足関節捻挫後の痛みを生じやすいと考えられています(長谷川ら,2001)。
フィンスイマーは競泳経験者が82%と多く、競泳選手と同様にフィンスイミング以外のスポーツや日常生活で足関節捻挫が多くみられています(湯浅ら,2020)。
フィンスイミングでも競泳のキックと同様に、足関節の内がえし捻挫後に足関節内がえし位で蹴り下げキックを行うと、前距腓靱帯が伸ばされて痛みが生じる可能性があります。

泳動作中に前距腓靱帯部に痛みが生じる
(Ari's Lab作成)
足関節捻挫による靱帯断裂後、時間がたった場合には断裂した靱帯が自然に元に戻ることはありません。
骨と骨をつないでいる靱帯が断裂すると足関節が不安定になりますが、完全に断裂していなくても足関節の不安定性が残ることがあります。
例えば、足関節捻挫を何度も繰り返している、足がぐらぐらして不安定な感じがある、片足立ちがうまくできない、つま先立ちでかかとが外側に倒れる場合などは要注意です。

×かかとが外側に倒れている
(Ari's Lab作成)
このような足関節の不安定性が足関節捻挫の再発、慢性的な痛み、さらには他の部位の痛みにつながるなどの問題となります。
具体的には、足関節捻挫後には腱障害(特に腓骨筋腱障害)(Ritter & Moore, 2008)や足関節後方インピンジメント症候群(Hamilton, 2008)を二次的に生じやすいと考えられています。
フィンスイミングによる足関節の痛みが「フィン使用時の自覚的な足関節の緩さや不安定感」と統計学的に有意に高い関連(オッズ比28.5,95%CI 7.7-105.9,p<0.01)がみられたのも(湯浅ら,2020)、競泳経験や足関節捻挫の後遺症による足関節の緩さや不安定感の残存が影響していることが推測されます。
実際、足関節周囲の痛みを訴えたフィンスイマーの78%は、痛みのある同側に足関節捻挫の既往がみられています(湯浅,2022)。
しかし、足関節の可動域を取り戻し、足関節周囲の筋力強化を行い、泳動作中に足関節が内がえしや過底屈にならないようにコントロールできれば、フィンスイミングによる前距腓靱帯部の痛みや不安定感は改善できるでしょう。
具体的には、足関節の外がえし作用のある腓骨筋や背屈作用のある前脛骨筋などが泳動作中に十分働かせることが重要です。
これは、足関節捻挫後に生じる可能性のある腱障害や足関節後方インピンジメント症候群の予防にもつながると考えています。

腓骨筋:足関節外がえし作用(Ari's Lab作成)

前脛骨筋:足関節背屈作用(Ari's Lab作成)
大切なことは足関節捻挫を軽くみることなく、足関節捻挫の再発や損傷部位の痛みが出ないように足関節の可動域、筋力、バランス能力など、足関節の機能を取り戻すことです。
フィンスイミングに必要な足関節捻挫後のリハビリなどは直接大会会場などで、あるいはこちらからご相談ください。
フィンスイミングによる痛みの詳細と対策(2)
|足関節後方インピンジメント症候群(三角骨障害など)
2023/07/17作成 2024/03/01修正
足関節後方インピンジメント症候群とは、足関節過底屈により脛骨と踵骨の間に骨や軟部組織が挟まれて足関節後方に痛みを生じる外傷・障害の総称で、その代表疾患は三角骨障害です。
バレエダンサーやサッカー選手など、足関節過底屈を強制されるスポーツで多く報告されています。



